楽しい夜
翌朝まで、飲んで騒いで(撮影:田中玲子)
その後、僕はちょっと疲れたので、数人の同僚と、静かなパブへ行ってビールを飲んでいた。その最中、長井さんが現れ、ラジカセを借りていかれた。別のパブで皆集まって騒いでいるから来いとのこと。また門田さんからも電話があり、僕を探しているとのこと。僕たちは、ビールを一杯飲み終わった後、その別のパブへと移動した。
パブは阪神ファンの五十人くらいで貸切り状態。若い連中は、外の歩道に座り込んで、祝杯を挙げていた。そのパブのマネージャーに挨拶をしたが、月曜日の夜、客の少ない日だったので、大勢のお客にマネージャーは結構喜んでいるみたい。
そのパブで、僕は、これまでメールのやりとりだけで実際に顔を合わせたこのとのなかった数人の方と初めてお会いした。「はじめまして」と挨拶を交わす。しかし、大部分の人たちは、今日、友達や同僚から集まりがあるのを聞いて、急遽集まってくださった人たちだった。
中には英国人もいた。彼は日本で買ったと言う「阪神優勝」のTシャツを着ていた。
僕は、人々に間を順番に回り、話をした。例によって「共通の話題」があるため、誰とでも話が弾む。
最後には、酔いつぶれた少女が出て救急車を呼んだり、地元の兄ちゃんたちと喧嘩になりそうになったり、いろいろな予期せぬ出来事もあった。でも、とても楽しい夜だった。
ノリッチから来た学生さんの一団に、
「川合さんが、こんな会を組織してくれたおかげで、今晩皆でこんなに楽しく騒げます。有難うございます。」
と言われたときは、こんな馬鹿なことでもやってよかったと、心から思った。
「君たちも、今日は遠いところから来てくれて有難う。」
僕は、彼らにお礼を言った。
十時半、まだまだ名残惜しいが、帰りの電車もあるので、僕は門田さんと、戸畑さんと一緒に地下鉄の駅へ向かった。翌日のメールによると、その後、一晩中騒いでいた連中もいたと言う。
十二時近くに家に着くと、救急車に一緒に乗ってもらった久保さんから携帯に電話があった。女の子は今晩病院に泊まり、久保さんはこれから家に帰るところだと言う。僕は彼女にお礼を言った。
そして、まだまだ頭の中は興奮していたが、翌日に備え、ベッドに入った。
翌朝、例のスポーツ新聞の記者からメールが来ていた。そこに書かれたウェッブアドレスをクリックすると、昨日の出来事がもう記事になっていた。写真には、スミレの作った横断幕を中心に、ライオンと国立美術館を背景に、同僚の戸畑さんがしっかりと写っていた。
(了)